- 包括的自立支援プログラムってなに?
- 他の職種にうまく説明ができない…
- 他のアセスメントとの違いを教えて!
施設ケアプラン(施設サービス計画書)を作成する施設ケアマネや生活相談員、介護職員によくある悩みですが、具体的な特長を知れば理解できます。
この記事では、包括的自立支援プログラムの特長について説明をします。
- 包括的自立支援プログラム研修会の指導者経験あり
- 施設ケアマネージャーの経験あり
- 現在は生活相談員としてケアプラン全般に関わる
ケアチェック表で具体的なケアを検討することができる
7つに分類されたケアチェック表
包括的自立支援プログラムのアセスメントシートには7つのケアチェック表があります。
- 食事、水分摂取に関するケア
- 排泄に関するケア
- 入浴、清拭等に関するケア
- 洗面、口腔清潔、整容、更衣に関するケア
- 基本動作、リハビリテーション等に関するケア
- 医療、健康に関するケア
- 心理、社会面等に関するケア
この7つの分野において、現在行っているケア内容をチェック表で確認していきます。
現状のケアの見直しから検討する
包括的自立支援プログラムの大きな特長は、現状のケアの見直しからケアプランを作成する視点を持っていることです。
例えば、現在は食事の摂取を全介助している。上肢の機能状態をみると、自分でスプーンを持つことができる、口までスプーンを持っていくことができるという動作を行うことは可能である。
食事摂取動作が可能な上肢機能があるにも関わらず、摂取を全介助で行っている状況は、利用者の状態に整合したケアとはいえません。
提供しているケア内容と利用者の状態が整合していないため、現状のケアの見直しが必要だということが明らかになります。
原因に対してケアを導入する
利用者が今の状況にあるのは何が原因なのか、それを整理するアセスメントの視点を持っています。
例えば、立位が保持できないという状況にある利用者のケアを考える時、その原因は何かを考える必要があります。原因を考えることで必要なケアが明らかになります。
下肢筋力の低下が原因で立位が保持できないのであれば、筋力をつける運動を行うことで、下肢の筋力がつき、立位が保持できるようになる、となります。
原因に対してアプローチし、原因となる状態が改善・解消するようにケアを考えます。
状況に対してケアを導入する
先に記述したように、原因に対してケアを導入することが基本となりますが、原因を改善・解消することが難しい場合は、状況に対してケアを導入します。
特に認知症が原因となる中核症状や周辺症状の場合や、回復が難しい身体状態(麻痺や欠損など)、性格などは、それ自体を改善・解消することが難しものです。
その場合には、原因によって起こっている状況に対してケアを導入します。
例えば、認知症が原因による理解力の低下や失行・失認などで、自分で食事を食べられない状況の場合、原因は認知症があるためとなるが、認知症そのものを改善・解消することは難しい。
なので、理解力の低下や失行・失認の症状に対して、食事であることを説明することや、摂取動作を説明する、手を添えて食事摂取動作を一緒に行うなどの状況に対するケアを導入します。
原因を解決・改善することには繋がりませんが、現状に対処したケアを考えます。
スタッフの行動を具体的に表すことができる
包括的自立支援プログラムではケア内容の記述は、主にスタッフがいつ、なにを、どのように実施するかを表します。スタッフの行動計画になります。
ケアチェック表で主となるケア内容を表し、施設サービス計画書(2)ではケア内容の具体的な手順を記述します。
居宅サービス計画書などではこのように記述してあることが多いかと思います。
サービス内容 | サービス種別 | 頻度 |
入浴介助 | 通所介護 | 週3回 |
施設サービス計画書ではこのように記述します。
サービス内容 | サービス種別 | 頻度 |
・入浴前に血圧、脈拍、体温を測定する。 ・脱衣室まで案内する。 ・袖を脱ぐ動作を勧め見守る。 ・頭を脱ぐときは介助する。 ・浴室への移動を介助する。 など | 介護職員 看護職員 | 月曜日・木曜日 14時 |
入浴介助の時に行う手順や留意事項を具体的に記述します。
行動を具体的に記述するメリット
- どのスタッフも共通したサービス内容を行うことができる。
- 実施したか、実施できたかの確認が行いやすい。
- 項目ごとに評価ができる。
できるだけ具体的に表すと実施、評価、改善がしやすくなります。
本人と家族の要望を反映することができる
ケアチェック表には、本人の訴えや希望と家族の訴えや希望を確認する項目があります。
7つの分類のチェック表ごとにそれぞれの希望を確認できます。
例えば
- 本人から、毎朝コーヒーが飲みたいと希望がある。
- 家族から、月に1回は自宅へ連れて帰りたいと希望がある。
このような希望に対するケアを導入して、施設サービス計画書に取り入れることができます。
自立支援とQOLの向上について検討することができる
現在のケア内容から自立支援につながるケアを導入する、またQOLを向上する検討が、各ケアチェック表で行えます。
- 適切なケアの導入で、全介助から一部介助へ変更となる。(自立支援)
- 趣味や好きなことを楽しむことができるように支援する。(QOLの向上)
「代替ケア」という項目でケアの検討ができるよう書式に組み込まれています。
以下の書籍が施設ケアプランの書き方についてわかりやすく解説してあります。具体的な記入例を交えているので、おすすめの書籍です。
まとめ
包括的自立支援プログラムには他のアセスメントツールにない特長があります。
- ケアチェック表で具体的なケアを検討することができる
- スタッフの行動を具体的に表すことができる
- 本人と家族の要望を反映することができる
- 自立支援とQOLの向上について検討することができる
包括的自立支援プログラムは、利用者の抱えている課題から施設ケアプランを作成するではなく、現在のケア内容の見直しから作成する手法をとっているアセスメントツールです。
特長・強みを理解して施設ケアプランの作成に取り組みましょう。
以下の記事では、包括的自立支援プログラムの「ケアチェック表の作成」と、「施設サービス計画書(2)の作成」について解説しているので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。
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